2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。
ニュースを見ながら、私が気になったのは、避難生活のために車で過ごす人たちのことでした。
家に戻れない。余震が続く建物の中で過ごすことに不安がある。乳幼児やペットがいて、避難所での生活が難しい。さまざまな事情から、車中泊を選ばざるを得ない人がいます。
しかし、災害が起きた日に初めて車で寝ようとしても、すぐに一晩を過ごせるとは限りません。
シートを倒しても体が斜めになる。荷物が邪魔で足を伸ばせない。夜中にトイレへ行く方法が決まっていない。暑くて窓を開けたいのに、雨や防犯が気になる。スマホを充電したら、照明や扇風機に使う電気が足りなくなる。
こうした問題は、防災用品を買いそろえただけでは分かりません。
一度、普段乗っている車で一晩過ごしてみる。そこで困ったことを記録し、次の一泊までに直してみる。
この経験は、旅行としての車中泊を楽しむだけでなく、災害時に「車で過ごせるのか」「別の避難先を選ぶべきか」を考える材料になります。
週末の車中泊が、もしもの安心につながる。
この記事では、そのための最初の一泊で何を試し、何を確認すればよいのかを整理します。
週末の車中泊を防災訓練として行う目的は、災害時も必ず車で避難できるようにすることではありません。
目的は、今乗っている車で一晩を試し、次のことを平時のうちに知っておくことです。
試した結果、「この車で家族全員が寝るのは難しい」「暑い時期は車内で過ごさない方がよい」と分かることもあります。
それも失敗ではありません。
車中泊が向かない条件を知り、指定避難所、在宅避難、親族宅、ホテル、福祉避難所など、別の選択肢を考えておくことも防災です。
熊本市が2026年に公表した「車中泊避難者支援ガイドライン」では、2016年の熊本地震で、避難所に入れない、余震による家屋倒壊が怖い、乳幼児やペットがいる、障害のある家族がいるなどの理由から、車中泊を選んだ人がいたことが整理されています。
一方で、熊本市は車中泊避難を積極的に勧めているわけではありません。
避難者向けマニュアルでは、避難所での避難を基本としたうえで、やむを得ず車中泊をする場合に備えて、平時から車内の寝床、暑さ・寒さ、飲食・衛生、通信・電力、安全などを確認するよう案内しています。
ここに、平時の車中泊経験を防災へつなげる意味があります。
発災時にいきなり長期間の車中泊を始めるのではなく、安全な場所と天候を選べる平時に一晩試す。その経験から、自分の車でできることと無理なことを分けておきます。

フルフラットと書かれている車でも、シートの継ぎ目に段差が残ったり、頭から足元へ傾斜がついたりします。
昼間に数分寝転ぶだけなら気にならなくても、夜中に腰や肩が痛くなり、何度も目が覚めることがあります。
家族で寝る場合は、幅も問題になります。大人二人なら寝られても、子どもやペットが加わると、寝返りを打つ場所がなくなるかもしれません。
後部座席と荷室を寝床にすると、そこに積んでいた着替え、水、食料、クーラーボックスなどを移さなければなりません。
助手席へ積み上げるのか、運転席はいつでも動かせる状態にしておくのか、雨の中でも荷物を移せるのか。寝床だけを見ていると、暗くなってから通路が荷物でふさがります。
夜中に使えるトイレが遠い。暗い。雨が降っている。一人で歩くのが不安。そうなると、水分を飲む量を減らしたくなります。
しかし、避難生活で水分を控え、狭い車内で同じ姿勢を続けることは、健康面の問題につながります。厚生労働省は、狭い車内などで寝起きする場合、定期的に体を動かし、十分に水分を取るよう案内しています。
平時の一泊でも、トイレまでの距離、夜間の明るさ、雨のときの移動方法を確認しておく必要があります。
扇風機があっても、熱くなった車内を冷房と同じようには冷やせません。電気毛布が暖めるのは主に体へ触れている部分で、車内全体の冷えや窓から入る冷気が消えるわけではありません。
外気温、日差し、湿度、風、駐車場所によっては、車内で過ごすこと自体をやめる判断が必要です。
最初の一泊は、真夏や真冬を避け、体調に異変を感じたらすぐ自宅や宿泊施設へ移れる条件で行います。
ポータブル電源を持っていても、何に何時間使うか決めていなければ、必要な容量は分かりません。
スマホを2台充電する。LED照明を5時間つける。扇風機を夜から朝まで動かす。冬は電気毛布を使う。
一泊で使った物と時間、開始時と翌朝の残量を記録すると、自分に必要な電気が見えてきます。
大容量のポータブル電源を先に買うのではなく、モバイルバッテリーや充電式ライトなど、今ある物で試すところから始めても構いません。
旅行として行う平時の車中泊と、災害時の車中泊避難は別のものです。

平時は、天気や場所を自分で選び、危険を感じたら中止できます。発災時は、道路の損傷、津波、浸水、土砂災害、火災、停電、断水などが重なっている可能性があります。
災害時は「車中泊をするか」より先に、次のことを確認します。
指定緊急避難場所は、洪水、土砂災害、地震、津波など、災害の種類ごとに指定されています。「普段から車を止められる場所だから」という理由だけで、道の駅、商業施設、公園の駐車場などへ向かわないでください。
やむを得ず車中泊避難をする場合も、自治体が指定・開設した場所を確認し、受付、健康観察、物資配布などの支援から孤立しないことが重要です。
防災訓練としての最初の一泊は、無理をして耐える場ではありません。
次のような条件から始めます。
「せっかく来たから朝まで我慢する」必要はありません。暑い、寒い、息苦しい、眠れない、体調がおかしいと感じたら、その時点で中止します。
中止した理由も、次の備えを考えるための大切な記録になります。

| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 車 | 車種、シートアレンジ、寝床の長さと幅 |
| 人数 | 大人、子ども、ペットを含む人数 |
| 天候 | 天気、予想最低・最高気温、風 |
| 場所 | 車中泊が認められた場所、トイレ、水場 |
| 退避先 | 自宅、宿泊施設、管理棟など |
| 電気 | 持っていく電源、開始時の残量 |
| 連絡 | 家族、施設管理者、緊急時の連絡方法 |
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 睡眠 | 眠れた時間、目が覚めた原因 |
| 寝床 | 痛くなった場所、段差、傾斜 |
| 温度 | 就寝時と起床時の車内・外気温 |
| 電気 | 使った機器、使用時間、翌朝の残量 |
| トイレ | 回数、距離、暗さ、雨天時の問題 |
| 荷物 | 邪魔になった物、取り出せなかった物 |
| 防犯 | 外からの視線、音、施錠で困ったこと |
| 次回 | 買う物ではなく、次に変えること |
一泊を終えたら、困ったことを次の三つに分けます。
この部分は、新しい商品を買わなくても改善できます。
家にある物で代用できる場合もあります。
この場合は、装備を増やすことより、別の避難先を考える方が先です。
一度の車中泊で、すべての備えを完成させる必要はありません。
知る
↓
安全な条件で試す
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困ったことを記録する
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配置・手順・道具を見直す
↓
もう一度試す
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もしものときに判断できる
私自身、長期の車中泊旅の中で、電気が足りない場面を経験してきました。その後、使いたい家電や旅の期間に合わせて、電源の容量や充電方法を見直しています。
ただ、大きな電源を積めば、すべての問題が解決するわけではありません。
車内の置き場所を取ります。自宅から車へ運べないほど重ければ、必要なときに使えません。電源が切れれば、電気に頼らない寒さ対策や照明も必要になります。
大切なのは、道具の大きさではなく、自分の車と家族で何が起きるかを知っていることです。
最初の一泊で電気が足りなかった場合も、すぐに商品を選ぶ必要はありません。困った段階に合わせて確認してください。
車中泊の夜に必要な電気を計算する記事で、スマホ、照明、冷蔵庫、電気毛布などの使用時間を整理します。
ポータブル電源が必要な人・不要な人の診断記事で、モバイルバッテリーで足りる人と、ポータブル電源を検討したい人を分けます。
ポータブル電源の選び方で、容量Wh、定格出力W、重さなどの基本を確認します。
ポータブル電源の比較ポイントで、容量、出力、重量、充電方法、保証などを確認します。
用途別のおすすめ容量で、一泊、冷蔵庫、電気毛布、連泊などに分けて考えます。
ここまで確認して、ポータブル電源が必要だと判断した場合は、車中泊用ポータブル電源のおすすめモデルで候補を比較できます。
災害時に車中泊をする可能性はあっても、その日が初めてでは、何に困るか分かりません。
足を伸ばして寝られるのか。荷物はどこへ置くのか。夜中にトイレへ行けるのか。暑さや寒さに耐えられるのか。スマホや照明に使う電気は足りるのか。
安全な場所と穏やかな天候を選び、週末に一度試してみると、自分の車でできることと、できないことが見えてきます。
困ったことが見つかったら、すぐ商品を買うのではなく、まず配置や手順を変える。それでも必要な物だけを加え、もう一度試します。
そして災害時は、車中泊ありきで動かず、災害の種類、自治体の情報、周囲の安全、家族の体調から避難先を判断してください。
週末の一泊は、車中泊なら必ず安全だと思うための訓練ではありません。
車中泊を選べる条件と、選ばない方がよい条件を知るための訓練です。
その経験が、もしものときに慌てず判断するための備えになります。
情報確認日:2026年8月5日
避難場所や支援方法は、自治体と災害の種類によって異なります。発災時には、自治体、気象庁、消防、警察などが発表する最新情報を確認してください。