災害が起きたとき、車は避難先へ向かう移動手段にも、やむを得ず夜を過ごす場所にもなります。
ただ、この二つは同じではありません。
津波や洪水、土砂災害から逃げている途中で、車中泊する駐車場を探すのは後の話。まず災害の危険から離れ、命を守れる場所へ避難します。安全が確保され、自宅に戻れず、避難生活が必要になったところで、車内で過ごすかを考えます。
車中泊避難は、指定避難所などに代わる最初の選択肢ではありません。やむを得ず車で過ごす場合は、自治体が開設・案内した場所へ入り、受付を済ませます。
内閣府の手引きでは、災害から逃れるために車で移動することと、避難生活を車内で送る「車中泊避難」を分けています。
車で移動した先が、そのまま夜を過ごせる場所とは限りません。駐車した場所が浸水区域や土砂災害警戒区域に入っていることもあれば、緊急車両や物資を運ぶ車の通り道になる場合もあります。
一方、避難所へ入りにくい事情から車内で過ごす場合は、トイレや給水場所があり、自治体の案内や健康確認を受けられる場所で過ごします。
同じ駐車場でも、地震では使えて、洪水や津波では危険になることがあります。
内閣府が示す「指定緊急避難場所」は、災害の危険から命を守るための場所。洪水、土砂災害、地震、津波など、災害の種類ごとに指定されています。「指定避難所」は、危険が去るまで、または自宅へ戻れない人が一定期間過ごす施設です。
発災時は、自治体の防災サイト、防災行政無線、テレビ、ラジオ、気象庁などから最新情報を確認します。平時に確認した避難場所も、発災時に開設されているとは限りません。自治体の最新情報で開設状況まで確かめます。
津波警報や注意報を見聞きしたとき、海辺で強い揺れや長い揺れを感じたときは、車中泊の準備より高い安全な場所への避難が先。津波避難は徒歩が原則とされており、地域の計画なしに車が集中すると、渋滞で動けなくなるおそれがあります。
大雨では、川沿い、低い土地、アンダーパス、すでに水がたまった道路へ車で入らないこと。土砂災害の危険がある地域では、斜面や谷筋から離れます。
広い駐車場や、平時に車中泊ができる施設・道の駅が、災害時にも使えるとは限りません。自治体によっては、指定避難所の駐車場、公園、公共施設などに車中泊避難用のスペースを設けます。名称や開設条件は地域ごとに違います。
場所へ着いたら、まず受付へ。氏名、人数、連絡先、体調、必要な支援を伝え、案内された区画へ車を止めます。通路や緊急車両の動線を空けておくためです。
受付では、給水や物資配布、トイレ、健康相談、避難先の変更といった案内も確認します。
内閣府は、飲料水と食料を最低3日分、できれば1週間分備えるよう案内しています。飲料水の目安は、1人1日3Lです。
水や食料は、自宅に置く分と、避難時に持ち出す分を分けておきます。車内は夏に高温になるため、積んだままにする物は保存条件と賞味期限も定期的に確認します。
開封してすぐ食べられる物と飲み水は、すぐ持ち出せる場所へ。断水中は、調理や洗い物にも水を使います。乳幼児の食事、食物アレルギー、食事制限があるなら、必要な食品を別に用意しておきます。
常用薬とお薬手帳も、食料とは別にすぐ持ち出せる場所へ。薬が少ない、車内では保管条件を守れない場合は、受付や医療支援へ早めに相談します。
建物が残っていても、断水や下水道の被害でトイレを流せないことがあります。車中泊場所へ着いたら、使えるトイレと夜間の利用方法を確認します。
携帯トイレは、車にも置いておきたい備えです。便器へ取り付ける袋、凝固剤、使用後に密閉する袋をまとめ、暗い場所でも取り出せる位置へ。使用済みの袋をどこへ出すかは、自治体や避難場所の案内に従います。
気をつけたいのが、トイレへ行く回数を減らそうとして水分まで控えること。脱水に加え、長時間動かない生活ではエコノミークラス症候群のリスクにも関わります。
夜間は、トイレまでの道と照明も確認。雨や雪の中を歩くのが難しい、段差がある、一人で移動できないといった場合は、我慢せず受付へ伝えます。
災害時の電気は、まず情報と連絡のために使います。
スマホ、モバイルバッテリー、乾電池式ラジオ、手元を照らすライト。充電できる場所が案内されているなら、利用時間や順番も確認します。スマホは省電力モードに切り替え、画面を暗くすると電池の減りを抑えられます。
扇風機、電気毛布、車載冷蔵庫なども動かすなら、必要な電力量は大きくなります。ポータブル電源の容量だけで決めず、使う機器のW数と時間を一つずつ計算。方法は、車中泊で一晩に何Wh使う?家電別に積み上げる電力計算で整理しています。
ポータブル電源があっても、充電できなければ残量は減る一方です。冷暖房で電気を使い切り、スマホや照明が使えなくならないようにします。車内の暑さや寒さに耐えられない場合は、安全な避難先へ移ります。
夏の車内は、日差しを受けると短時間で温度が上がります。
日陰へ車を移せるか。風を通せるか。夜になっても熱が残っていないか。車内で過ごせない暑さなら、冷房のある避難所や別の安全な施設へ移る判断が必要です。
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、吐き気など、熱中症が疑われる変化があれば、涼しい場所へ移動して体を冷やします。自力で水が飲めない、意識がはっきりしない場合は、すぐに救急車を呼んでください。
災害時は、道路状況や避難情報が変わります。移動する前に受付や自治体の案内を確認します。車内の暑さを判断する手順は、夏の車中泊・暑さ対策完全ガイドでも確認できます。
エンジンを切った車内で、寝具や防寒着だけでは寒さに耐えられないなら、屋内の避難場所や暖房のある施設へ移れるか受付へ相談します。
積雪時にマフラー周辺が雪で塞がれると、排気ガスが車内へ入り、一酸化炭素中毒になる危険があります。JAFは、降雪時はできるだけエンジンを切り、やむを得ず車内にとどまる場合はマフラー周辺を定期的に除雪するよう案内しています。
窓を少し開けても、雪や風の状態によっては車内の一酸化炭素濃度が上がります。就寝中の暖房をエンジンに頼る状況なら、車中泊を続けず受付へ相談します。
厚生労働省は、エコノミークラス症候群の予防として、軽い体操やストレッチ、こまめな水分補給、かかとの上げ下ろし、ゆったりした服装などを挙げています。眠るときは、足を伸ばせる寝床を作り、可能なら少し高くします。
トイレが気になっても、水分を減らさないこと。アルコールは控え、起きている間はときどき車外へ出て体を動かします。外へ出る場合は、周囲の安全と避難場所のルールを確認します。
胸の痛み、片脚の痛み・赤み・むくみがある場合は、早めに医師や救護担当へ相談してください。
横になって足を伸ばせない。暑さや寒さに耐えられない。自力でトイレへ行けない。体調が悪くなっている。こうしたときは受付へ相談し、別の避難先を探します。
乳幼児、高齢者、妊婦、持病のある人、介助が必要な人では、必要な環境がそれぞれ違います。現在の状態と必要な環境を、受付、保健師、医療担当者などへ伝えます。
医療機器の電源、薬の保管、通院や処置が必要なら、その条件を満たせる避難先が必要です。車内では対応できない場合は、早めに相談します。
車内にいると、避難所の掲示や館内放送が届かないことがあります。給水の時間が変わった。別のトイレが開いた。避難場所を移すことになった。知らないままでは困る情報です。
受付の場所、情報が掲示される場所、連絡方法、健康確認の時間を確かめます。車を移動するときも、行き先を受付へ伝えます。
車中泊避難が長引いたら、自宅へ戻れるのか、指定避難所、親族宅、ホテル、福祉避難所などへ移れるのかを相談します。
平時に一晩試してみると、寝床を作れるか、足を伸ばせるか、荷物が通路を塞がないかを確かめられます。トイレまでの移動、スマホと照明の電池、暑さや寒さも実際に分かります。
平時の車中泊は、災害時の避難生活をそのまま再現するものではありません。一晩終えたら、困ったことをメモして次回までに直します。
車中泊を続けるかは、場所、気温、体調、支援状況が変わるたびに見直します。車内で過ごせない状態になったら、受付へ相談し、別の避難先へ移ります。
情報確認日:2026年8月25日
地域によって避難場所の名称、開設条件、受付方法、支援内容は異なります。発災時は、お住まいの自治体と気象庁などが発表する最新情報を優先してください。